同じ数式でも、電卓によって結果が変わることがあります。その原因のほとんどは、それぞれの電卓が演算の優先順位をどう定めているかにあります。このガイドでは SciKey の優先順位表の全体を示し、たびたび議論になる三つの式 -2^2、2^3^2、6÷2(1+2) を詳しく見ていきます。
1. SciKey の優先順位(高い順)
| 順位 | 演算 | 結合方向 | 例 |
|---|---|---|---|
| 1 | かっこ、関数呼び出し | (1+2)、sin(30) | |
| 2 | 後置 ! % ° | 左から右 | 5! = 120、50% = 0.5 |
| 3 | べき乗 ^ | 右から左 | 2^3^2 = 512 |
| 4 | 単項 - + | -2^2 = −4 | |
| 5 | ×、÷、mod、省略された乗算 | 左から右 | 6÷2(1+2) = 9 |
| 6 | +、− | 左から右 | 10−4−3 = 3 |
同じ順位の演算子は結合方向に従います。8÷2÷2 は (8÷2)÷2 = 2、10−4−3 は (10−4)−3 = 3 です。
2. -2^2 はなぜ −4 なのか
数学では −2² を −(2²) = −4 と読みます。べき乗が先で、マイナスはその結果にかかります。x = 2 のとき −x² = −4 になるのと同じ規則です。SciKey は単項マイナスをべき乗より低い順位にしているので、-2^2 は −4 を返します。(−2)² を求めるにはかっこを使います: (-2)^2 = 4。
指数側の符号はそのまま使えます: 2^-3 は 2⁻³ = 0.125。
Excel は違う
Microsoft Excel では =-2^2 が 4 を返します。Microsoft のドキュメント「Excel の計算演算子と優先順位」では、優先順位の表で負の符号(−1 のマイナス)がパーセント(%)やべき乗(^)より上に置かれているため、Excel は (−2)² を計算します。表計算ソフトと電卓の結果が食い違ったら、これを疑いましょう。Excel で −4 を得るには =-(2^2) と入力します。
プログラミング言語もさまざまです。Python は -2**2 を −4 と計算します(数学の慣習と同じ)が、JavaScript は -2**2 をあいまいとみなし、かっこを付けない限り構文エラーとして受け付けません。
3. べき乗は右から: 2^3^2 = 512
数学では 2^3^2 のようなべき乗の塔は 2^(3²) = 2⁹ = 512 を意味します。指数の指数を先に計算するからです。SciKey は ^ を右結合として扱うので、2^3^2 = 512 です。(2³)² = 64 を求めるなら (2^3)^2 と書きます。
Excel のドキュメントには、同じ優先順位の演算子は左から右に計算され、べき乗も例外ではないとあるため、Excel では =2^3^2 が 64 になります。ここでも、かっこを使えばどこでも意図がはっきりします。
4. 6÷2(1+2) 論争
この式はネット上で繰り返し話題になり、9 派と 1 派に分かれて議論が続きます。
- 9 と読む立場: 省略された乗算もただの乗算。6÷2×3 = (6÷2)×3 = 9。
- 1 と読む立場: 2(1+2) は 2a のようにひとまとまりなので先に計算する。6÷(2×3) = 1。
公正な結論は、どちらかが「間違い」なのではなく、表記そのものがあいまいだということです。専門的な文章ではこの書き方を避け、分数の横線やかっこを使います。
SciKey の選択
SciKey は省略された乗算を通常の乗算・除算と同じ優先順位とし、左から計算します。したがって:
6÷2(1+2)= 91/2π= (1/2)×π = 1.57079632679(π/2 とも表示)- 1/(2π) を求めるなら
1/(2π)= 0.159154943092
こうしたのは、規則が一つのほうが予測しやすいからです。乗算と除算は、記号が書かれているかどうかにかかわらず、書かれた順に計算します。
ほかの電卓は?
メーカーや機種によっては、記号を省略した乗算を通常の × や ÷ より先に計算するよう設計されているため、同じ式で 1 が出ることがあります。挙動は機種ごとに違うので、試験で使う電卓の取扱説明書を確認してください。いちばん安全なのは、そもそもあいまいな式を入力しないことです。
5. 後置演算子と %
!、%、° は直前の値にだけかかります。
3!2= 3! × 2 = 12(省略された乗算)2×3!= 12、一方(2×3)!= 720200×15%= 200 × 0.15 = 30100+10%= 100 + 0.1 = 100.1
最後の例に注意してください。卓上電卓の中には 100 + 10 % を「100 に 10% を加える」(= 110)と扱うものがありますが、SciKey の % は単に 100 で割るだけです。10% の割増なら 100×(1+10%) = 110 と入力します。
6. mod の優先順位と符号
mod は乗算と同じ順位です。2+7 mod 3 は 2 + (7 mod 3) = 3。結果の符号は割る数に従います: -7 mod 3 = 2、7 mod -3 = −2。-7 mod 3 では、単項の符号が乗算の順位より上なので、マイナスがまず 7 に付きます。
7. 関数・定数とべき乗
関数呼び出しは最も優先順位が高いので、sin(30)^2 は (sin 30°)² = 0.25 で、教科書の sin²30° と同じです(DEG)。30² の正弦を求めるなら中に入れます: sin(30^2)。SciKey では関数にかっこが必須なので、sin 30^2 のようなあいまいな入力は受け付けません。
定数の後ろのべき乗は、省略された乗算より強く結び付きます。2π^2 は 2×(π²) = 19.7392088022 で、(2π)² = 39.4784176044 ではありません。そのため球の表面積 4πr² を 4πx^2 と入力しても意図どおりに計算されます。
8. かっこであいまいさをなくす
規則を覚えるより確実なのは、かっこを惜しまず使うことです。
| 意図 | あいまいな入力 | 明確な入力 |
|---|---|---|
| a/(bc) | a/bc | a/(b×c) |
| (−x)² | -x^2 | (-x)^2 |
| e^(−t/RC) | e^-t/RC | e^(-t/(R×C)) |
| (a+b)/2 | a+b/2 | (a+b)/2 |
表の a、b、t、R、C は仮の文字です。SciKey では数値か変数 x・y・z に置き換えてください(R は気体定数にすでに使われている点に注意)。3行目の e^-t/RC は (e^−t)/RC と計算されます。指数が式のときは必ずかっこでくくりましょう。余分なかっこで答えが間違うことはありませんが、かっこが足りないと間違えることはよくあります。
9. まとめ
- べき乗は単項マイナスより先:
-2^2= −4(Excel では 4) - べき乗は右から:
2^3^2= 512 - ×、÷、省略された乗算は同じ順位で左から:
6÷2(1+2)= 9 %は 100 で割る:100+10%= 100.1- 迷ったらかっこを付ける