対数は、べき乗の逆の演算です。10³ = 1000 なので log₁₀ 1000 = 3。つまり「何回掛ければこの数になるか」に答えます。科学や工学では、水素イオン濃度、音の強さ、地震のエネルギーのように桁違いに幅のある量を扱いやすい数に縮めるために対数を使います。このガイドでは、SciKey の対数関数、底の変換、対数の性質、実践的な例題を説明します。
1. SciKey の対数関数
| 入力 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
log(x) | 常用対数(底 10) | log(1000) = 3 |
ln(x) | 自然対数(底 e ≈ 2.71828) | ln(e^2) = 2 |
log(a, x) | a を底とする x の対数 logₐx | log(2, 8) = 3 |
log2(x) | 2 を底とする対数 | log2(1024) = 10 |
log(a, x) では底を先に書きます。 カシオの電卓と同じ順序です。log(2, 8) は log₂8 = 3、log(8, 2) は log₈2 = 0.333333333333(= 1/3)です。表計算ソフトの LOG 関数は LOG(数値, 底) と逆の順序なので、式を移すときは注意しましょう。
逆の演算は 10^x と e^x(または exp(x))です。10^(log(7)) は 7 を返します。
2. 底の変換公式
どんな底の対数も、一つの対数関数で計算できます。
logₐx = ln x / ln a = log x / log a
例: log₂1000 = ln(1000)/ln(2) = 9.96578428466 で、log(2, 1000) と同じ値です。ここから、1000 を2進数で表すには 10 ビット必要なこともわかります(2⁹ = 512 < 1000 < 1024 = 2¹⁰)。
それぞれの対数はかっこでくくりましょう。ln(1000)/ln(2) は正しく計算されますが、log 1000/log 2 は関数のかっこがないので不正な入力として受け付けられません。
3. 対数の性質
| 性質 | 公式 | 確認 |
|---|---|---|
| 積 | log(ab) = log a + log b | log(20) = log 2 + log 10 = 1.30103 |
| 商 | log(a/b) = log a − log b | log(0.5) = −0.30103 |
| べき | log(aⁿ) = n log a | log(2¹⁰) = 10 × 0.30103 = 3.0103 |
| 1 の対数 | log 1 = 0 | どの底でも |
| 底の対数 | logₐa = 1 | ln e = 1 |
暗算での見積もりに便利な値: log 2 ≈ 0.30103、log 3 ≈ 0.47712、ln 2 ≈ 0.693147、ln 10 ≈ 2.302585。
4. 例題 1: pH
pH = −log[H⁺]。[H⁺] は水素イオン濃度(mol/L)です。
- [H⁺] = 3.2×10⁻⁴ mol/L →
-log(3.2E-4)= 3.49485002168 - 逆に、pH 3.5 の溶液は
10^-3.5= 3.16227766017×10⁻⁴ mol/L
pH が 1 下がるごとに水素イオンは 10 倍になります。pH 3 は pH 5 の 100 倍です。
-log(...) のマイナスは対数全体にかかります。関数呼び出しは単項の符号より先に計算されるからです。
5. 例題 2: デシベル
- 電力比: dB = 10 log(P₂/P₁)。電力が 200 倍 →
10log(200)= 23.0102999566 dB - 電圧・音圧の比: dB = 20 log(V₂/V₁)。電圧が 5 倍 →
20log(5)= 13.9794000867 dB - 3 dB はほぼ電力 2 倍:
10log(2)= 3.01029995664
電力は 10、振幅は 20 という係数の違いで多くの人がつまずきます。電力は振幅の2乗に比例し、log(V²) = 2 log V なので 20 になります。
6. 例題 3: 複利で2倍になる期間
年 5% の複利で元金が2倍になる期間 n は、1.05ⁿ = 2 を解いて求めます。
n = ln 2 / ln 1.05 → ln(2)/ln(1.05) = 14.2066990829 年
log(1.05, 2) でも同じ結果になります。よく知られた「72の法則」(72 ÷ 5 = 14.4 年)は、この値の近似です。
7. 例題 4: 半減期
炭素14 の半減期を約 5,730 年とすると、炭素14 が元の 30% だけ残っている試料の年代は
t = 半減期 × ln(残存割合) / ln(0.5) → 5730×ln(0.3)/ln(0.5) = 9952.81285457
つまり約 9,950 年前です。ln(0.3) も ln(0.5) も負なので、比は正になります。同じ方法で、薬物の体内からの消失やコンデンサーの放電(e^(−t/RC))も扱えます。
コンデンサーの例: RC = 2 s の回路で、電圧が 10% まで下がる時間は t = −RC ln(0.1) → -2ln(0.1) = 4.60517018599 s。
8. 例題 5: 地震のマグニチュードとエネルギー
(モーメント)マグニチュードが 1 上がるごとに、放出されるエネルギーは 10^1.5 倍、つまり約 32 倍になります。マグニチュードの差 ΔM に対するエネルギー比は 10^(1.5ΔM) です。
- マグニチュード 6 と 5:
10^1.5→ 31.6227766017 倍 - マグニチュード 7 と 5:
10^(1.5×2)→ 1000 倍
指数が式なのでかっこが必要です: 10^(1.5×2)。10^1.5×2 と入力すると (10^1.5)×2 = 63.2455532034 になります。
9. 例題 6: 大きな数の桁数を数える
正の整数 N の桁数は floor(log N) + 1 です。2⁶⁴ は何桁でしょうか? floor(64log(2))+1 → 20。実際 2⁶⁴ = 18,446,744,073,709,551,616 は 20 桁です。直接計算しにくい数の大きさも、対数を使えば見積もれます。
10. 定義域: エラーになる場合
実数の対数は正の数に対してだけ定義されています。
log(0)→ 数学エラー。x が 0 に近づくと log x は限りなく小さくなります(−∞)。ln(-5)→ 数学エラー。負の数の対数は複素数になり、SciKey は複素数に対応していません。- 1 より小さい正の数の対数は単に負になるだけで、エラーではありません:
log(0.001)= −3。
数式がエラーになったら、x = 1.2 のときの ln(1-x) のように、対数の中の値が 0 や負になっていないか確認しましょう。
11. よくあるミス
- log と ln の混同。 分野によっては(純粋数学や一部の物理の教科書)「log」が自然対数を意味します。資料がどの底を使っているか確認しましょう。
- log(a, x) の引数の順序。 SciKey とカシオの電卓では底が先です。
- log(a+b) を log a + log b に分ける。 対数は積を和に変えますが、和を簡単にはしません。正しいのは log(ab) = log a + log b です。
- デシベルの係数。 電力は 10、振幅は 20 です。