電卓で三角関数の答えが合わない最大の原因は、公式ではなく角度モードです。同じ sin(30) でも、DEG では 0.5、RAD では −0.988 になります。このガイドでは、三つの角度の単位、相互の換算、モードに関係なく SciKey で度を入力する方法、そしてラジアンがなぜ存在するのかを説明します。
1. 三つの角度の単位
| 単位 | 1回転 | 直角 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 度 (DEG) | 360° | 90° | 日常、測量、図面、学校の幾何 |
| ラジアン (RAD) | 2π ≈ 6.28319 | π/2 ≈ 1.5708 | 微積分、物理(角速度・振動)、プログラミング |
| グラード (GRAD, gon) | 400 gon | 100 gon | ヨーロッパの一部の測量 |
1 ラジアンは、半径と同じ長さの弧に対する中心角です。半径 r の円では、弧の長さ s とラジアンで表した角 θ の間に s = rθ という簡単な関係が成り立ちます。円周は 2πr なので、1回転は 2π ラジアンです。
2. 換算式
- ラジアン = 度 × π / 180
- 度 = ラジアン × 180 / π
- 1 rad = 57.2957795131°、1° = 0.0174532925199 rad
- 1 gon = 0.9°、100 gon = 90°
SciKey には換算用の関数があります: rad(30) = 0.523598775598(= π/6)、deg(1) = 57.2957795131。
3. モードの間違いによる誤答
| 入力 | DEG モード | RAD モード |
|---|---|---|
sin(30) | 0.5 | −0.988031624093 |
cos(60) | 0.5 | −0.952412980415 |
50tan(35) | 35.0103769105 | 23.6907360207 |
RAD モードの sin(30) は 30 ラジアン(約 4.77 回転)の正弦なので、まったく違う答えになります。結果が思いがけず負になったり、どこかおかしかったりしたら、公式を疑う前にモード表示を確認しましょう。
最後の行は実際の問題です。50 m 離れた地点から仰角 35° で見上げた建物の高さは 50 tan 35° ≈ 35.01 m です。RAD モードでは 23.69 m になり、もっともらしく見えるぶん見落としやすいのが厄介です。次の二つの習慣で防げます。
- 計算を始める前にモードを設定する。
- 度で与えられた角度には
°を付ける。
4. ° 記号: モードに関係なく度で入力する
数の後ろに ° を付けると、その値は度とみなされ、現在の角度の単位に換算されます。そのため RAD モードでも sin(30°) は 0.5 です。ほとんどがラジアンの物理の問題で、たまに出てくる度の値をモードを切り替えずに扱えます。
逆に、ラジアンの値を DEG モードで使いたいときは deg() で包みます。DEG モードでの例: sin(deg(π/6)) = 0.5。
DEG と GRAD モードでは、三角関数はまず引数を 360°(400 gon)で正確に還元し、90° の倍数では正確な値を返します。そのため sin(180) は 0、cos(90) は 0 で、tan(90) は定義されないのでエラーを返します。
5. 逆三角関数の結果の単位
asin、acos、atan は現在の角度の単位で結果を返します。
| 入力 | DEG | RAD | GRAD |
|---|---|---|---|
asin(0.5) | 30 | 0.523598775598 | 33.3333333333 |
atan(1) | 45 | 0.785398163397 | 50 |
逆三角関数が返す値の範囲は決まっています。asin と atan は −90°~90°、acos は 0°~180° です。そのため点 (−1, −1) の方向を atan((-1)/(-1)) で求めると 45° になってしまいますが、実際には第3象限の −135°(または 225°)です。座標から方向を求めるときは、象限を区別する atan2(y, x) を使いましょう: atan2(-1, -1) = −135(DEG)。
asin(2) のように −1~1 の範囲外の入力は数学エラーになります。丸めの結果 1.0000001 のように 1 をわずかに超えた測定値に注意してください。
6. ラジアンを使う場面
微積分
sin x の導関数が cos x になるのは x がラジアンのときだけで、度では π/180 という係数が現れます。小角近似 sin x ≈ x もラジアンが前提です: sin(0.1)(RAD)= 0.0998334166 で、0.1 より 0.17% 小さいだけです。テイラー展開、標準的な積分、フーリエ解析もすべてラジアンを前提にしています。
物理: 角速度と円運動
角速度 ω の単位は rad/s です。1,500 rpm で回転する軸なら:
1500×2π/60→ 157.079632679(rad/s、= 50π)- 軸から 0.2 m の位置の速さ:
Ans×0.2→ 31.4159265359(m/s)
v = rω が換算係数なしで成り立つのは、ω がラジアンだからです。振動(x = A sin ωt)や交流回路(位相角)もラジアンで計算します。ωt はもともとラジアンなので、電卓は RAD モードにしておく必要があります。
弧の長さ
半径 5 m、中心角 72° の弧の長さ s = rθ では、θ をラジアンにする必要があります: 5×rad(72) → 6.28318530718(m、= 2π)。度をそのまま代入して 5×72 = 360 としてしまうのはよくあるミスです。
7. 例題: 勾配(%)と角度
「勾配 10%」という道路標識は角度ではありません。水平に 100 m 進むごとに 10 m 上がるという意味です。角度に換算するには逆正接を使います。DEG モードで atan(0.1) → 5.7105931375°。逆に 3° の傾斜は 100tan(3) → 5.24077792830 % です。1:12 のスロープのように比で与えられた傾斜も同じ方法で扱えます: atan(1/12) → 4.76364169072°。RAD モードでは atan(0.1) が 0.0996686524912 を返すので、答えが 0.1 に近すぎると感じたらモードを疑いましょう。
8. 10秒でモードを確認する方法
表示を見落としたときは sin(90) を計算してみます。DEG ならちょうど 1、RAD なら 0.893996663601、GRAD なら 0.987688340595 です。値がはっきり異なるので、試験中の簡単な確認に使えます。
9. まとめ
- 問題に ° 記号があれば DEG、π・rad/s・ωt があれば RAD。
- 迷ったら
30°のように単位を直接付ける。 - 逆三角関数の結果は現在の単位で出る。象限が重要なときは
atan2を使う。 - 「このサインは本当に負になるはずか?」と自問するのが、いちばん確実な検算です。